No.115_焙煎機の窯の中

背の高さを越えるそして重量約350kgもある焙煎機が店内にありますので、時々お客さまから『あれが焙煎機ですか!』、『機関車みたいですね!』と驚かれることがあります。そして更に興味をお持ちの方で、お時間が許す方には焙煎機を間近に見て頂くこともあります。そこで今回は、その時ご質問頂いた内容、お応えしたことをご紹介させて頂こうかと思います。

丁度この『つぶやきNo.59』に焙煎機の姿を掲載していますので、もし宜しければそちらも参照頂きながら、以下ご覧頂けるとイメージが湧き易いかもしれません。

焙煎する生豆は上部のホッパー(大きなじょうご状の部分)から投入します。その豆は窯の中で(正確には窯の中の『シリンダー』部分で)で焙煎されて行くのですが、今回はその窯の中のお話になります。

今回の写真を先にご覧になった方は、『一体何だ?これは?』と思われたかと思うのですが、実はこれがシリンダー内の様子です。焙煎が完了した豆の排出口(No.59掲載写真の『PROBAT』と書いてある部分の狭いところ)を開けて、覗くように撮影したのですが、ここまで説明しても分かり辛いですね...きっと。

焙煎機のシリンダー部分は円筒を水平にした空間で、その中心に軸があり、焙煎中はシリンダー全体が回転しています。(軸は今回の写真中央の棒状の部分です。)

その様子は『ドラム式全自動洗濯機に似た』と言うと、イメージ出来るかと思うのですが...シリンダー内には写真の通り複雑に板状のものが配置されています。そして焙煎中はシリンダーが回転しているので豆は跳ね上げられ、且つ空中でもバラバラと撹拌されながらやき進みます。ところで、この様に焙煎のことを『豆をやく』とも言いますが、この『やく』は、『フライパンで焼く』とか『網に載せて焼く』の『焼く』とは大きく状況が異なり『熱風でやく』のです。そこで僕としては当て字ですが是非『焙く(やく)』とお伝えしたいです。

『えっ?熱風で焙く?』ですね...

いろどりこーひーの焙煎機はドイツのPROBAT(プロバット)社製なのですが、これは半熱風式と言われる方式で主に熱風で焙いて行きます。因みに今回の写真、シリンダー突き当たりにパンチング状の穴が沢山空いているのが見えるでしょうか?シリンダーの下ではガスの火が焚かれますが、豆はその火に直接触れることなく、このパンチング状の穴から強力に吸い込まれる熱風で焙かれて行きます。と言うのも、焙煎機と煙突の間にはサイクロンと呼ばれるエアー吸引装置が設置されていて、これが焙煎機内の熱風を強烈に吸い込み、煙突経由、排煙しているからです。(ここではチャフと呼ばれる豆の皮も外に放出しない様、除去されます。)

この熱風で焙いていく(細かくはシリンダー金属への接触熱、それを囲っている窯の鉄(鋳物)の輻射熱・遠赤外線も加わり)PRPBATの方式は豆の表面から芯まで均質に焙き進めることが出来るとても優れた方式です。この『均質に』ということは非常に大切なことで、前述の豆内(表面から芯まで)もありますが、豆間(焙いている全ての豆粒間)もです。これにより雑味のない柔らかな風味が実現されるのです。

因みにシリンダー内にはその温度を測定するための金属の棒(温度感知棒)が設置されています。焙煎中はこれに豆がコツコツ当たり、気温と豆の表面温度の融合したものが、シリンダー内温度としてデジタル表示されるわけです。ですから僕はここで表示される温度は『シリンダー内温度=豆の温度』とイメージして、豆に与えるカロリーをコントロールしながら焙煎を進めています。

今日はかなりマニアックな内容、且つ長文になってしまいました。(苦笑)

 

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