No.145_福山雅治さんのMARTINギター〜そして音と味...

この店を始めてから、何か番組を観たり、人の話を聴いたり、本を読んでも、何かと自身の商売と重ね合わせて“こと”を捉える様になった気がします。今回もそんな話なのですが...先日、NHKの番組 Music Special 福山雅治/時を超えるギター”を観た時のことです。

番組の全体の流れとしては、『福山さんは約10年前に手に入れたお気に入りのアコースティックギター(アメリカMARTIN社製)の音が、気に入ってはいるけど「更にもっといい音が出るはずだ」とずっと感じていたとのことで、今回そのギターを製造をしたMARTIN社に持ち込み、リペアを依頼。そして3ヶ月後、リペア完了したギターを受け取りに再びMARTIN社を訪問。そこで試し弾きした瞬間、ギターの音色のあまりの変わりように『ワアォ!』と驚き、感動。番組ではそのリペアに携わった多くの職人達の作業風景や彼らとの対話を紹介していく...』といったものでした。

福山さんが所有するギターは、1940年製 “プリウォーD-45”(1933年〜1942年の間に91本だけ製造)というビンテージものです。そしてMARTIN社がその音色の違和感の原因を調査したところ、前所有者がブリッジプレート(弦を固定するブリッジをその裏側から固定するパーツ)を覆うように補強板を貼り付けていたことが音の違和感の原因だと判明。今回のリペアではそれを剥がし修復。ネックもボディから一旦外してフルリペアした結果、前述のような奇跡の音(福山さん談)に生まれ変わったのです。

この流れを観ていて凄く感じたのは、福山さんが最初に違和感を感じたのも、リペアした職人たちが、その過程で頼りにしたものも、ただただ “音色”、そしてそれを聴き分ける “耳” だったと言うことです。

番組の中でも福山さんが同じフレーズを弾いたBefore、Afterの音が流れましたが、僕が聴いても変わったなぁ!と感じる程です。福山さんもおっしゃってましたが、6弦1オンずつの音がしっかり聞こえ、それでフレーズを弾くと、なんとも心地よい厚み、余韻が広がる。そんな変わり様でした。

これを観て図らずも、そしておこがましくも自分がやっているブレンドが思い浮かんでしまいました。ブレンドは先ずはブレンドに使用するそれぞれの豆がクリーンにちゃんとヤケていることが基本です。そしてブレンドすることでシングルとはまた異なる心地よい風味、奥行き、バランス、余韻を作り出す...この全ての過程で頼りにするのはただただ “味” 、そしてその微妙な良し悪しを感じ取る “味覚” なのです。

音と味、聴力と味覚...分野は違えど職人気質で何か通じ合うものを感じたのでした。

最後に...リペアに携わったある職人さんがこんなことを応えていました『僕が作るギターはどれも僕より長生きしてほしいと思いながら作っているよ。そしてギターを手にした人が、そのギターより長く生き続けるような音楽を作ってくれることを願っているよ。』

楽器を造るって素敵な仕事だなぁって思いました。

 

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