No.287_焙煎の煎り止めで「1℃の違い」を焼き分けるということ

1回の焙煎は、生豆を窯に入れてから20分ほどで終了します。その終了のタイミング、つまり焙煎機から豆を出す瞬間を「煎り止め」といいます。そして、そのときの窯の中の温度を「煎り止め温度」、または「ロースティングポイント」と呼びます

いろどりこーひーでは、この「煎り止め温度」を豆種に応じて1℃単位で細かく定めています。一番浅い煎り加減のものと、一番深いものでは、10数℃の違いがあります

そして、この「煎り止め温度」を決定する一番の根拠は、出来上がった豆の「味」です

焙煎後は、「カッピング」と呼ばれる味のチェックを行います。特に初めて扱う豆の場合は、あえて煎り止め温度を1℃変えた豆を焼き分けて準備し、風味をじっくり比較します。「どちらの方が、よりその豆の魅力を引き出せているか?」。それを何度も確認しながら、その豆にとってベストな煎り止め温度を定めていきます

いろどりこーひーの焙煎では、煎り止め温度1℃の差は、時間にするとおよそ5〜6秒の違いです

「たった5〜6秒!?」

「その程度の差は誤差の範囲じゃないの?」

もしかしたら、そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこのわずかな差が、風味の明るさ、コク、クリアーさ、質感、そして余韻の心地よさにまで、繊細に影響してくるのです

だからこそ、煎り止めで1℃の違いを焼き分けるには、「風味の再現性」と「味覚」、この両輪が揃わなくてはなりません

仮に「あと1℃だけ高く煎った豆と比較したい」と思っても、それ以前の焙煎プロセスにブレがあったのでは正確な比較はできません。その手前の段階で、すでに味の違いが生まれているからです

美味しいコーヒーをお届けするため、開店以来、この2つのスキルを磨き続けてきました

そんな過程で見出した一つの事象を、ここでご紹介します

結論から申し上げると、「煎り止め温度は、夏よりも冬のほうが1℃高く設定することがある」ということです

窯から取り出された豆はすぐに冷却装置へ移され、強力な送風と撹拌によって一気に冷やされます。煎り直後の豆は200℃を超える高温のため、窯から出た瞬間に変化がぴたっと止まるわけではありません。冷却中も豆の内部には熱が残っており、1〜2分ほどかけてじわじわと成分の変化が収束していきます

この冷却は、室内の空気を吸い込むことで行います。 そのため、冷却に使う空気の温度は「その日の室温」そのもの。夏は30℃前後ですが、冬は10℃前後まで下がります。この約20℃の差によって、夏はややゆっくり、冬は冷気によってさっと冷やされます

冬場はさっと冷やされる分、余熱による味の変化が早く止まります。そのため、最終的な風味を夏と同じ最高の状態に着地させるべく、冬場はあえて煎り止め温度を1℃高く設定することがあるのです

……いやはや、途中から、かなりマニアックな世界に入り込んでしまいました(苦笑)

ですが、このような細かなところまでアンテナを張り、季節や豆の状態に合わせて微調整を重ねていくこと。その地道な積み重ねこそが、お客さまにいつでも「変わらぬ美味しさ」や「さらなる美味しさ」をお届けすることにつながると信じています

今日も1℃と数秒に向き合いながら、心を込めて豆を焙煎しています

 

いろどりこーひーは珈琲豆を通して、皆様の心豊かな暮らしに“彩り”をお届けします

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