No.266_焙煎進行中のブレ調整の勘所
前回のつぶやき『No.265_乾熱調理としての焙煎』の中で、
『窯内の温度上昇5℃毎の通過タイムを設定し、毎回その全段階を±6秒以内の誤差で通過するよう、エネルギー(火力)コントロールに注意を払っています』
と記しました
焙煎中は、この「数秒の“ブレ”」に神経を使い続けています(“ズレ”までいかないように)
この最中は、【遅れ、進みの兆候を把握→対処】を繰り返すのですが、【遅れ、進み】のブレ(目標通過タイムからブレた秒数)が小さいほど、目標進行に沿っていることになりますので、それが出来上がった豆の風味の再現性を高めます
【遅れ、進みの兆候の把握】については、単に「その秒数を把握する」だけではなく、その秒数が表している意味「現在どのような状況下にあるか?」を体で感じることが大切です(その辺の心持ちはつぶやきNo.262でも触れました)
そこで今回のテーマは、それを把握した上での対処に関する勘所のお話です
これは少し例を示した方が、お伝えしやすいかもしれません
例えば窯内温度150℃通過時、6秒の遅れが生じた時、150℃〜155℃間の火力は、予定火力よりほんの少しあげて155℃のチェックポイントでその回復を図るのですが、いきなり±0(遅れなし)を目指すのではなく、その時点では-3秒だけ回復させて、その先の160℃のチェックポイントで±0になることを目指します
この例で仮に150℃〜155℃で-6秒短縮し155℃で±0を達成したとすると、その間与えた多めの火力がドラムにも、それを覆う分厚い鋳物の窯にも、そして排気系統までにも作用し(温め)、それら全体が多めに蓄熱します。するとこの余計な蓄熱が次のフェーズで進行を早める方向に作用し、今度は逆に6秒早過ぎの様な事態を招きます(急ブレーキ、急発進できない電車運転のイメージです)
これではフェーズ毎に早過ぎ、遅過ぎ、早過ぎ、遅過ぎを繰り返すような...飛行機の挙動に例えるなら“ダッチロール(不安定な蛇行)”の様なものです。これは焙煎の進行コントロールとしては一番よろしくありません
この様な進行を経た場合、たとえ最終的な全体時間が予定通りでも、また焼き色が同じに見えても、豆の風味は確実に違ったものとなります
それは、前回のつぶやき『No.265_乾熱調理としての焙煎』でも触れた、
『乾熱調理の特徴は、時系列に「調理を積み上げていく」ところ、言い換えると「状態を積み上げる」ということ』
に拠ります
また、上記の例の150℃〜155℃の様に5℃刻みに切り出したフェーズで捉えた場合、その間の経過時間が計画時間より短ければ、「その間、与えた熱量が多かった」と捉えます。逆に長ければ、「与えた熱量が少なかった」と捉えます
ここで気付かれたと思いますが、「ブレてしまった6秒も、意図的に戻した6秒も出来上がりの豆の風味にとっては、同じく影響を及ぼす」と言うことです
つまり焙煎とは、“後からの帳尻合わせが一切効かない世界”なのです
だからこそ、ブレは最小限に!、ブレの絶対値の合計秒数も最小化!
これが、豆の風味の再現性を高めていく上では、極めて重要なことになります
焙煎とは、「今この瞬間の積み重ねが、そのまま味になる作業」なのだと感じています
それ故、焙煎中はいっときもその場を離れられませんし、気がつけば僕自身が焙煎の流れの中に完全に入り込んでいる、そんな「没入」の世界です
いろどりこーひーは珈琲豆を通して、皆様の心豊かな暮らしに“彩り”をお届けします