No.119_味覚を磨く、マスタリーへの挑戦
とっても私的な事柄の書き出しで恐縮なのですが...
本日5/30は父の誕生日で米寿を迎えました。父は僕の故郷北海道岩見沢市で夫婦で元気に暮らしていますが、このつぶやきを毎週読んでいるのだそうです、いろどりこーひーを飲みながら^^。今回は僕も定休を利用して、久しぶりに帰郷。子供、孫、ひ孫たちも集合して、お祝いしました。
さて、今回はいよいよ味覚シリーズの最終章です。(シリーズだったんですね...笑)
[つぶやきNo.117]で『味覚とは...』、[つぶやきNo.118]で『コーヒー豆作りにおける味覚を磨く意味合い』について触れました。そして今回は『味覚を磨く』です。味覚をどうやって磨いていくか!です。これはNo.118で触れた通り、食品を製造する上では(飲食業でも)確かな味覚を備えていることは、最も大切、且つ必須なことだと思っています(焙煎もいわゆる乾熱調理の世界です)。一方で味覚は一朝一夕には身に付かず、とても難しく、時間の掛かることであるとも思っています。
そんな中、大きなヒントがNo.117で引用させて頂いた、三國清三シェフの言葉にあると思っています。『味覚の仕組みを知る/味覚は気付きだ(ワラビのエピソード)/味覚は心掛け、取り組み一つで、程度の差こそあれ、何歳になっても磨いて行ける』です。
しかし、頭の中では『なるほど!』、『そうなんですね!』と漠然と理解出来ても、ではどんな取り組みを継続して行くのか!が、大きな課題です。
No.117で“ワラビのエピソード”を引用しました。そこには『山菜取りに行ったものの、最初は生い茂る草木の中でどこに山菜があるかなんて全くわからない。しかし同行した山菜採り名人から、『そこにワラビがある!』と教えられ『本当だ!』と一度気が付くと(意識出来ると)他のワラビもどんどん見つけられるようになる』 と言うものでした。そして三國さんは『味覚を知ると言うことは“気付き”だ!』おっしゃっています。
実は僕にもこの名人に当たる師匠がいます。開店当初からお世話になっており、味覚の面はもちろんあらゆる事柄で全幅の信頼を寄せている方です。
No.118でより美味しいコーヒー豆を作るには、焙煎、カッピング、焙煎、カッピングをひたすら繰り返すこと、すなわち研ぎ澄まされた味覚軸のもと把握、評価、工夫の仮説を立て再度実施、検証を繰り返すこと、そして“美味しさ”を更に更に高めていくと書きました。
実はそのカッピングの過程で同じ豆を10g封筒に詰めて師匠の元へも送り、カッピングチェックを仰いでいます。もちろん事前に自身でカッピングを行い、自己評価(うまく行ったと感じたこと、もう少しこうしたいと感じたこと等)を添えて送り、その内容についてアドバイスを頂いています。
師匠からは『商品の美味しさは店主の味覚以上のものは提供出来ない』と言われています。これはとっても重く受け止めています。自身の味覚は未だ未だ途上だと思っているので...
味覚を磨く行為は、決して交わることのない(到達することがない)漸近線(ぜんきんせん/今回の写真)の先へ先へと進んで行く様なものです。
ある本に書いてありましたが、このような取り組み、挑戦を『マスタリー(熟達)への道』と呼ぶようです。これはアスリートや芸術、創作(物も食も)の世界のトップを走る人たちは誰もが持っている心持ちとのことでした。
そう言う意味では大谷翔平さんがこれからどれだけ前人未踏の記録を打ち立てようと、これで満足ということは無いと思いますし、藤井聡太6冠が仮に8冠を達成しても『はい、全てやり切りました』と更なる取り組みを止めることは無いでしょう。テニスのジョコビッチもグランドスラム大会を22回も優勝してさえ、尚も飽くなき鍛錬、挑戦を続けているのですから...
世界、レベルは全く異なりますが、僕もコーヒー豆の世界で自分の描くマスタリーに向かって挑戦を続けたいと思っています。
いろどりこーひーは珈琲豆を通して、皆様の心豊かな生活に“彩り”をお届けします。