No.134_コーヒーは苦いですか?

「コーヒーが苦手」と仰る方から伺う、コーヒーのネガティブな風味表現に“苦い”というのがあります。皆さんはコーヒーを飲んで苦いと感じたことはありますか?

一方で時々お客さまから「私、苦いのが好きなんですが、この中で一番苦いのはどれですか?」と真逆のことを聞かれることもあります。

苦いコーヒーをご希望されると正直、お応えに苦慮してしまうのですが(^^;; 、この“苦い”と言う味表現、なかなか奥が深いというか、手強い感じがします...

つぶやきNo.117で世の中の食べ物は4つの基本味“甘味、塩味、酸味、苦味”で構成されていると言ったお話に触れました。その中でも今回は苦味についてもう少し掘り下げてみたいと思います。

かなり古い本ですが、河野友美(1929-1999)さんが1980年に著した『日本人の味覚』という本の中に以下のような文書がありました。

『苦味は、舌の部分で言えばやや奥の方で感じる。その奥の部分でも前に近い方と奥の方とでは苦味の感じ方が違う。美味しく感じる苦味は、どちらかというと前の方で感じる苦味である。薬などあまり良ろしくない感じの苦味は舌のより奥の方で感じる苦味である。ただ、食品に良い感じを与えるカラメルといった苦味でも、そのカラメルの出来具合によってかなり良い苦味と良くない苦味に分かれる。カラメルは糖分が180℃位に加熱された時に出来てくるが、出来始めのカラメルは美味しいのに、糖分の変化が進み過ぎて、色が非常に濃くなり過ぎるとその苦味は不味く感じる。また、糖分は適度な高温にさらされるとカラメルの他、タンパク質の変化と相まってメラノイジンといった香り成分も形成されていく。』

この中に『糖分のカラメル化が180℃くらいで始まり...』 とありますが、日々焙煎をしていて僕もこれには思い当たる節があります。と言うのも焙煎進行の中でもこの前後はとても大きなエネルギーを必要とするからです。具体的には火力を3倍程に強めます。これにより化学変化が促進され、焙煎中も明らかに香りの変化を感じます。そしてこの化学変化が済んだら再び火力を1/3に戻します。

また、上記に『糖分の変化が進み過ぎると不味い苦味が出来上がる。』 ともあります。どうやら「コーヒーは苦くて苦手」と仰る方は、この不味い苦味を体験された可能性が高そうです。苦いコーヒーを飲んだ後、舌の上の奥の方にニガニガした嫌な感じが残り続けるのは焦げ感のある豆は論外ですが、このような状態になっただけでも不味さとして感じてしまうようです。

つぶやきNo.122で深煎りなのに苦くない...をテーマにしましたが、上記解説の通り『イイあんばいの焙煎』をすると、苦味とは違う魅力的な美味しさが出来上がるということです。

豆を美味しくするのも、苦くしてしまうのも焙煎次第というところがあるんですね...そういう意味では焙煎人の責任は重大です。

 

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