No.160_酸が甘さに包まれているデコポン、そしてコーヒー

熊本のデコポン(今回の写真)は僕にとって春の訪れをいの一番に感じさせてくれる、そして大好物のフルーツです。

デコポンの美味しいところは、質の良い酸が甘さに包まれているところです。

実はこの “質の良い酸”、そしてそれが “甘さに包まれている”は、コーヒーの美味しさにも当てはまる大切な要素です。

と、聞いても『フルーツの美味しさとコーヒーの美味しさの要素が同じ??全然違う味じゃない!?』...そう思われた方も多いですね。

コーヒーはコーヒーノキに実る(さくらんぼの様な)赤い果実の種子です(中には黄色く熟す樹種もありますが)。そういう意味で、『コーヒーはフルーツ!』とも言えるわけです。

コーヒーもフルーツと捉えると前述の “質の良い酸” は、以下の様な条件下で育まれます。①適正に施肥された肥沃な土地で、②太陽の陽を適正に浴びてしっかり光合成し(熱すぎる直射も良くないので、シェードツリーと呼ばれる日陰を作る木が添え植えされる例も多いようです)、③風通しが良く、④適度な寒暖にさらされ(年中、そして昼夜の寒暖差は15℃〜25℃程度が理想で、10℃を下回ったり、30℃を超える日が多いと不作になるようです)、⑤適度な降雨(年間降水量1500〜2500mm程度)、そして⑥収穫時に真っ赤な完熟実だけを選別収穫(コーヒーノキは開花後、小さな実が結実し、その後更に8〜9ヶ月掛けてその実がだんだん大きくなり、且つその色が緑→黄→オレンジ→赤と熟して行きます。実によってその生育度(熟すタイミング)にバラツキがありますが、収穫時は真っ赤な完熟実だけを選別収穫することが求められます。仮にもそこに未熟実、過熟実が混ざるとコーヒーの風味は途端に損なわれてしまいます。)

コーヒーは、言ってしまえばタネですが、それを取り出す果実をそのまま食べられるフルーツの如く、丹念に育て、収穫することが美味しいコーヒーに繋がっているってスゴイこと、素晴らしいことだなって思ってしまいます。

このように “質の良い酸” 作りは、生産者に委ねられている側面が大きいですが、方やそれが “甘さに包まれている” の実現は焙煎に委ねられています。“質の良い酸” を活かすも無駄にするも焙煎次第、焙煎人はそんな重要な役割を負っているわけです。そして、そんなことを胸に、日々の焙煎に取り組んでいます。

 

いろどりこーひーは珈琲豆を通して、皆様の心豊かな生活に彩りをお届けします。

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P.S.

後段の “甘さに包まれている”の実現に必要な焙煎手法について、宜しければ『No.155_焙煎は科学』、『No.156_焙煎は化学』辺りをご参照ください。